本研究は沖縄県でもひときわ多くの祭祀・儀礼が継承されていると評される沖縄県今帰仁村古宇利島を主なフィールドとして、過疎・高齢化する小社会において祭祀・儀礼の継承困難とはどのような問題として経験されているのかを明らかにしようとした。 本研究をとおして、祭祀・儀礼の継承者が過疎・高齢化を原因として不在であるからというよりは、以ドのいっけん矛盾するかのような2つの要因がむしろ祭範の継承困難に作用していたことが明らかとなった。ひとつめの要因は、祭祀・儀礼を差配、執行してきた神人を輩出してきた母体である門中(ムンチュウ)とよばれる父系親族組織が集結する契機が失われっっあったこと。ふたつめに神人の継承には厳しい条件が課されているが、それらを軽視するよりもむしろ遵守しようとするからこそ神人の継承が畏れおおいものとして継承が困難化していたこと.したがって多くの聖地や神々に対する祀り方は"正当"な継承者を欠くことで個人的なものへと拡散し、神人が祀ることで再生産されてきたシマ社会の中心部でもある御嶽や拝所は、多様な物語性を失いつつあることで均質な型地へと変化しつつあった。
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