本研究は、ドイツ知的障害親の会レーベンスヒルフェの成立史と組織機構変遷を軸として、レーベンスヒルフェと特殊教育制度の関係を総合的に考察することを目的とする。筆者はこれまで、全国レヴェルのレーベンスヒルフェに視点を置き研究を行ってきたが、今年度は、全国に支部を持つレーベンスヒルフェの地域史研究をすすめていくうえでの基礎作りを行うことに主眼を置いた。 まず、マールブルク大学図書館にて、親の会レーベンスヒルフェの資料及び大学児童精神医学部・精神医学部の史資料調査を行い、多数のクロニクルのコピーを入手した。オランダ人トム・ムッタースが創設したとされるレーベンスヒルフェであるが、実際はマールブルク大学の当該学部の教授陣がかなりサポートしていた可能性がある。今回入手した資料はそれを裏付けるものであった。その成果は、研究ノートとしてまとめ、本学研究紀要で発表済みである。 また、元レーベンスヒルフェ-ドナウの言語療法士、ヴィクトリア・シャウプ氏にインタヴューを行った。前回の出張時には、1980年代のバイエルン州のレーベンスヒルフェで早期療育部門で働いていたハイディ・ハーラー氏から話を聞いた。シャウプ氏も同じく、早期療育部門で働いていた。シャウプ氏が働いていたのは2000年代前半であった。両者の話を総合することで、バイエルン州レーベンスヒルフェの早期療育部門の現代史がより明確になった。 さらに、ベルリン国立図書館にて、戦後ドイツの特殊教育制度変遷に関わる資料を入手した。
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