研究課題
色のついた透明プラスチックフィルム(以下、有色透明フィルム)が発達性読み書き障害児の音読速度に与える影響に関しては、まだ一致した見解はない。本研究は、日本語話者の発達性読み書き障害児群を対象とし、音読速度へ有色透明フィルム使用が与える影響について検討することを目的としている。平成22年度(第1研究)は、日本語話者の発達性読み書き障害児に音読課題を実施し、有色透明フィルムの色の要因が音読速度に与える影響を検討した。その結果、典型発達児群、発達性読み書き障害児群ともに、有色透明フィルムの使用は音読速度に影響を及ぼさないのではないかと考えられた。一方、第1研究における照度の統制が先行研究との結果の相違に影響を与えている可能性があり、検討の余地があると思われた。そこで平成23年度(第2研究)は、第1研究の中で照度条件を統制しない音読課題を実施し、有色透明フィルム使用が音読速度に与える影響を照度と色の変化を合わせた要因に焦点を当てて検討した。対象児は、典型発達児24名と発達性読み書き障害児13名である。実験手続きは第1研究と同様だが、有色透明フィルム使用時に低下した課題の表面照度の補正は行わなかった。その結果、典型発達児群、発達性読み書き障害児群ともに、照度の要因を検討した場合であっても、有色透明フィルム使用は発達性読み書き障害児の音読速度に影響を及ぼさないのではないかと考えられた。音読速度に影響を与えることが想定される色と照度に焦点を当てて音読実験を実施した結果、有色透明フィルム使用による音読速度の有意な短縮は認められなかった。有色透明フィルム使用は、発達性読み書き障害児の音読速度向上に寄与しないのではないかと考えられた。
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音声言語医学
巻: 53(1) ページ: 8-19
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ページ: 520-528
10.1016/j.braindev.2011.09.005