研究概要 |
現在の我が国において、「環境エネルギー問題の解決」と「ものづくり産業の復活」は、重要な課題である。これらの問題解決に学術面から貢献する為、まず、アジアを中心とする太陽電池産業を採り上げ、その構造の本質を、「製造・工程アーキテクチャ」,「ものづくり組織能力」、「地域別風土・環境」の3つの観点から、実証論的・比較論的に分析している。その研究成果に基づき、国際分業化社会における日本の環境エネルギー関連のものづくり産業のあるべき姿を描き、その実現に向けた戦略作りに繋げるのが,本研究の狙いである。 H22年度は,アジアの太陽電池産業の構造を明らかにする為、国内外の研究機関や企業,業界団体など関係各方面のヒアリング調査と文献調査を実施し,主要展示会やシンポジウムへ参加して最先端の市場・技術動向を把握した.また、進境著しい中国の数多くの太陽電池メーカーや経済特区を視察し,その製造・工程アーキテクチャやものづくり組織能力を調査した。 その結果,中国のベンチャー企業精神溢れる経営姿勢や,多くの経済特区を競わせつつ巨額の投資を呼び込む戦略的な経済政策が,その競争力の一因であることが判明した。しかし,その一方で,輸出一辺倒の政策により,欧州の政治・経済状況の影響をまともに受け,多くの企業が採算割れの状況にある.この状況を打破するため,多くの中国企業が,結晶シリコン系へ経営資源を集中させており,原料精製・合金結晶化・ウエハ・セルの上流からモジュール・システム等の下流に至る垂直統合化により,価格競争力が増し採算性も改善してきている.その一方,国内辺境地への太陽光発電による電化政策などで内需も増加しつつある。 これに対しわが国の太陽電池企業は,産業規模の点で既に中国に大きく水をあけられている.わが国の企業が技術的優位性を確保している間に,アジア新興国との確固たる共存共栄戦略を描くことが,今年度の主要課題である。
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