研究概要 |
我が国にとって太陽電池産業は,地球温暖化とエネルギー危機対策のみならず,雇用や経済面でも貢献が期待できる最重要産業のひとつである.しかし,日本の生産シェアはかつての5割から1割未満に減少し,代わりにシェア7割を超える中国・台湾勢が市場を席巻している.しかし,世界債務危機や過当競争の影響で,彼ら自身も赤字にあえぎ,欧米メーカーでは倒産が続出している.このような背景の下,日本が本分野で持続的発展を遂げていくために必要な,中国太陽電池産業の経営分析と共同戦略の研究を実施した.分析フレームワークとしては,種々の産業分野で成果を挙げている「ものづくり国際経営の3つの鍵概念:アーキテクチャ(設計思想)・組織能力・産業地理学」を用いた. その結果,以下の3点を明らかにした.1)中国のアーキテクチャは基本的にモジュラー型である.但し,上流工程のウエハやセルは,労働集約的なインテグラル型である.2)組織能力面では,外国人専門家や留学帰国生,政府等の人脈活用に特徴がある.3)産業地理学的には,経済技術開発特区を起爆剤に,国内原材料や安価な人件費による国内生産・海外輸出の立地優位を確立している.今後は,西部メガソーラーやスマートグリッド化の振興政策による大幅な内需拡大が期待できる. 以上の分析結果に基づき,以下3つの日台中共同戦略を策定した.(1)高度なインテグラル(擦り合わせ)型部材と設備をコアとする共同戦略,(2)「高変換効率セル・長寿命モジュール」技術をベースに,台湾と共同で大量生産可能な技術をパッケージ化し,中国にライセンス販売や生産委託する戦略,(3)中国のメガソーラーやスマートグリッドに,日本のシステム技術と台湾のIT・電子基幹部品を組み合わせて販売する「内モジュラー/外インテグラル型」の共同戦略. これらの戦略の有効性をビジネスの現場で検証すべく,提案していく.
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