本研究で得られた研究成果は以下の通りである。 理論研究 理論研究では、まず「関係特殊的投資と排他条件付取引の関係」について分析を進めた。分析の結果、将来的に効率的な企業の参入を阻止する目的で投資契約が行われる可能性があることがわかった。この結果は、投資契約が最近競争政策の分野で議論されている優越的地位の乱用と関連があることを示唆しており、今後の競争政策の運営に貢献するものと思われる。 また、「川上既存企業の破産制約の有無と排他条件付取引との関係」について分析を行った。分析の結果、破産制約が存在すると排他条件付取引が実現する可能性が高まることがわかった。この結果より、企業の資産や大規模投資の有無が排他条件付取引の実現可能性に大きく影響を与えるこという政策インプリケーションが得られた。 最後に、「企業の生産能力と排他条件付取引との関係」について分析を進めた。分析を進めていく中で、企業が容易に生産設備を大きくできない場合、反競争的な排他条件付取引が実現しやすくなりそうだということがわかった。しかし、モデル分析が複雑になっており、簡単化する必要があることがわかった。 実験研究 実験研究では、研究計画通り排他条件付取引のプレ実験を行った。プレ実験では、まず先行研究の実験を再現し、その上で2011年度に実行する予定の実験を行った。サンプルが少なく暫定的な結果ではあるが、参入企業が存在すると排他条件付取引が失敗する可能性が50パーセント低下しており、参入企業の役割を考慮に入れることが重要であることがわかった。
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