研究概要 |
乳腺外来患者が抱く遺伝に対する意識の特徴を明らかとするため、乳腺外来を初診にて受診した患者(確定診断前)233名に対して、確定診断前、確定診断時、初期治療(入院治療)を終え退院2週間後から1年後に渡り、縦断的に面接調査を実施した。参加者233名は、確定診断において74名が乳がんと診断され、159名は良性腫瘤/乳腺症といった乳腺における良性の疾患と診断された。 確定診断前(初診時)における乳腺外来患者が抱く遺伝に対する意識については、昨年度解析を実施し、本年度、Familial Cancerに投稿し、受理・出版された。 確定診断前(初診時)に面接調査を実施し、さらに確定診断後に面接調査を実施できた131名(乳がん患者34名、良性疾患患者97名)のうち、9名(6.9%)が確定診断後の臨床心理士との面接において自発的に遺伝に関する内容を語っていた。一方、131名中確定診断前(初診時)に遺伝に関する意識を自発的に表出した患者は25名(19.1%)であった。確定診断前後における遺伝に関する意識表出の頻度に関してFisherの直接確率検定を行ったところ、確定診断後には遺伝に関する意識を表出しなくなる傾向があった(x^2(1)=4.025,p=0.067)。面接内容の質的分析から、乳がんと診断された患者は今後の治療や自身の生活に対する懸念や不安を述べることが多く、良性(乳腺症や良性腫瘤など)と診断された患者は安堵感を述べることが多いことが、その理由として考えられた。また、乳がんと診断された患者のうち継続面接が可能であった28名に対して、初期治療を終えた2週間後から約1年後までの期間に実施された138面接においても遺伝に関する意識表出頻度は2.9%(4/138)と低かった。面接内容の質的検討から、治療期間においては、実施している治療に関して述べられることが多いことがわかった。 本研究における知見は、遺伝に関する情報の患者への伝達時期/遺伝カウンセリング導入時期に対する患者のレディネスに関する検討の一助となるものであり、臨床活動に還元できるものであった。
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