平成22年度の本研究の計画としては、日本帰国1年目であるため、まず研究を日本で行っていくための基本的なインフラ整備を核とすえた。計画通り前半はPCなどの研究資材を整え、研究環境を整備した。そして後半からは経営者インタビューを行うとともに、理論構築とデータ収集のためのサンプル抽出を行った。慶応大学メディアセンターと協力して、日本のM&Aデータベースも若干遅れはしたが導入することもできた。そのために予定していた資金は、上海、アメリカ、台湾への海外出張を通じて経営者や研究者とのインタビューに充てることができ、これまで日本企業の研究、特に日本企業のアジアへのM&Aに関して不足していた知見を補うことができた。そうした研究成果は平成23年度に出版される「Errors in Organizations」に収録された論文「Errors at the top of the hierarchy」にも反映されている。また、この成果は直接「Impression management in cross-border acquisitions」という論文のベースとなって、組織・戦略分野の世界的な学会であるStrategic Management Society meeting(平成23年度11月開催)に発表するべく投稿され、現在査読中である。日本企業が苦手と言われてきた国際的なM&Aについて、社会学的な視点からの分析を行ったこの論文は、学会でも大きな注目を集めることが期待される。 来年度は、まずこの論文の完成度を上げ査読付きの学会誌に投稿できるレベルに発展させたい。更により深いレベルで経営者にインタビューを行い、M&Aを行った後の日本企業の動向の研究に関して、更に新しい論文の構想を練り、データ収集、検証を通じて国際的な学会への発表を行い、国際レベルの研究者からのフィードバックを受け、さらに高い研究を行っていく予定である。
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