前年度から引く続き日本企業のM&A活動についての研究を行った。前年度の成果は論文「Impression management in cross-border acquisitions」として、組織・戦略分野の世界的な学会であるStrategic Management Society meetingに、査読を経て発表できた(平成23年度11月)。日本企業が苦手と言われてきた国際的なM&Aについて、社会学的な視点からの分析を行ったこの論文は、参加者からも様々なフィードバックを受けることができ、また当該学会での他の発表を参考に現在学会誌投稿に向けて遂行中である。 また、それに加え、今年度は日本企業のM&Aの(統合)失敗という点で、当初の予定から少し視点を変え、キリン-サントリーの事例に象徴されるM&Aの「破談」についての実証研究を進めた。M&Aをいったんマスコミに発表した以上、途中でやめることは大変な社会的なプレッシャーがある。また、経営者としての見識を問うマスコミも多く存在する。そうした中で、M&Aを貫徹することが善であると思われがちであるが、様々な不確定要因の存在するM&Aでは、理解が進み、間違っていると判断された場合「止める勇気」も必要ではないかという点が、論文の基本骨子である。データによる実証研究を進めたが、「破談」のデータは十分ではなく、一定の結果は出たものの、投稿を行った世界最大の学会Academy of Management(2012年)では、残念ながらアクセプトされなかった。但し、「破談」についてはこれまで学術的な研究はほぼ皆無であり、研究の重要性は高い。現在更なるデータ収集を進めている。
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