今年度はベイズ統計と信頼性の観点に重点をおいて発達データ分析のための方法論の開発を行い、また研究成果の発表を行った。とくに、発達データでしばしば登場する非対称な構造を持つ類似度データを、ベイズ統計を用いてモデリングおよび推定し多次元尺度構成法で布置する方法論を開発した。本研究は国際的な査読付き論文誌に発表された。また、発達データ分析において不可欠となる信頼性係数を推定するための各種方法論を、系統的にレビューするとともに様々な現実的な条件下での数値実験で評価する研究を行った。本成果は国内の査読付き論文誌に発表された。これら2篇の論文については、作成したプログラムスクリプト(ソフトウェア)も併せて発表し、本研究成果を他の研究者が利用しやすくすることに配慮した。さらに、本研究の成果を利用して国際比較データを分析する応用研究を行った。この成果は国際的な査読付き論文誌に発表された。 また、これまでの本事業の研究成果を公開し今日数するために、大規模学会におけるワークショップ・シンポジウムの開催および著書の執筆を行った。とくに日本心理学会第75回大会においては、企画者としてワークショップ「発達・老化のダイナミックスと個人差を捉える新しい縦断データ分析法」を開催し、多数のご来場をいただいた。ここでは自らが話題提供者として軌跡分析を中心に本事業の成果を発表したほか、同分野の他研究者にもご発表をいただき議論を行った。また、発達データ分析における仮説検定への過度な依存による弊害が国際的に指摘されている現状を鑑み、より実質的・実践的なデータ分析のための各種方法論をまとめた共著の著書を執筆し出版した。
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