「路上につどう人々」(『解放社会学研究』)では、野宿者の当事者運動における支援者と野宿者の協同の困難について検討した。とくにこの論考で検討した知見は本研究における「埒外」の社会史を展開するうえで、(1)意図せざる排除(2)向き合うことの困難性に関わるものであるといえる。なお青木秀男編著『ホームレス・スタディーズ』においても申請者は同様に野宿者と支援者の協同をめぐる社会的包摂と排除の陥穽について考察した。また「〈社会学的映像実践〉を考える」(『KG/GP社会学批評別冊』)では、ストリートのおける空間実践の映像的把握について方法論的に考察すると同時に、野宿者にとってストリートとはどのような場かということを考察している。ストリートとは近代初期に各地で整備されて消失されたとされる生活と通行が同時に存在する不分明な地帯を想定しているが、この論考は「埒外」の社会史を展開するうえで(3)法外でもなく無法でもない空間について考察することでもある。なおこの論考については日本社会学会において学会報告している。本研究計画において、「ホームレス問題の授業づくり全国ネット」において活動する全国の中学・高等学校教員への聞き取りを掲げていたが、本年度は大阪(2)・神奈川(1)・熊本(1)・兵庫(1)の教員に聞き取りを行った。地域・学校ごとに授業において野宿者の取り上げ方および生徒の反応に差異があり、今後も全国各地の教員に聞き取りを行うなかで野宿者をめぐる知識の受容について考察を深めていく。なお調査内容の一部は日大社会学会(2010年7月)にて学会報告を行った。
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