(1)公的扶助の賭条件(コンディショナリティ)について 公的扶助のコンディショナリティは、経済市場を通さずに所得=給付を得ることに対して、資本主義の経済的秩序を維持するための装置として正当性を与えられている。この他にも、政府化された帰属、つまり特定の行政区への所属証明やそれに連なる納税証明の根拠として、また私的扶養の義務を貫徹させる論理から正当化されている。コンディショナリティには量的側面と質的側面があるが、質的側面(給付形態、就労条件、私的生活への介入など)の組み合わせによって、貧困の関係/象徴的側面に対する負の影響を与えるものとして理解できることがわかった。この貧困の関係/象徴的側面は、物質的側面とは異なる貧困の内部要素として理解されており、スティグマや市民権の剥奪、意見表明の欠如などを指す(Lister2004)。旧来の貧困概念では物質的側面に焦点化され、これに対する公的扶助の物質的な(事後的)改善が企図されていた。しかし、この物質的改善は、コンディショナリティによる関係/象徴的側面への悪影響も伴っていることがわかった。 (2)地域福祉の位置 このような公的扶助の基本的課題を緩和するためには、貧困解決において、公的扶助とは別の制度からアプローチすることが求められる。社会扶助の強化など(例:基本所得)はその一法であるが、当事者の集合的な主体性を発揮した取組みとしては、日本では地域福祉の意義を仮定できた。この意義を検討するためには、地域福祉の在宅福祉論や計画論などと貧困との関連をより精査していくことが求められる。 (3)アメリカの状況 アメリカでは、特に単身の稼働年齢層に対する一般扶助については、制度自体の存在自体が州ごとの裁量によって左右され、かつ存在している事業のコンディショナリティは他の公的扶助と同様かそれ以上に強化されていることがわかった。ただし、この事業では給付の量的水準が他の事業よりも低く設定されていた。
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