当初の予定とは異なり、有権者における仕事と政治の関連について検討する上で格好の題材といえる練馬区選挙管理委員会における大学生のインターンシップ活動に関わる機会を得た。そのため、この活動に対する参与観察を行い研究の成果をまとめた。学生達は、選挙管理委員会におけるインターンシップ活動を通じて、選挙における中立性を遵守しながら、なるべく(税金を財源とする)経費をかけずに、少しでも多くの有権者の投票を促すという選挙管理委員会における啓発活動について、正統的周辺参加の過程を経て学習することが出来た。3か月間のインターンシップは、学生達が有権者や民主政治のあるべき姿について考えると同時に、啓発発動が課外活動やボランティアではなく、厳密な法律の規制の下にあり、あくまで成果が求められる「仕事」であるというということを実感する過程でもあった。これは、自らの仕事と政治を関連づけるフレームを獲得することが大学生にとって、キャリア形成という観点からも有権者という観点からも有効であることを示唆しているといえよう。 加えて、平成22年度とは異なり、私的領域と政治を関連づけるフレームを直接文章で提示するのではなく、従属変数となる政治関心や政治的有効性感覚の測定の前に尋ねる質問項目(個人の私的生活に関連した直接経験争点・私的生活とは関連し難い間接経験争点)を変えることによってフレームを潜在的に操作するインターネット調査実験を行った。その結果、フレームの政治関心および政治的有効性感覚には群ごとの差が見られなかった。この点については、回答者が調査のみに集中しているとは限らないインターネット調査実験という手法の特徴を踏まえ、実験室実験を行うことや、より強いフレームの操作を行うといった改善策が望まれる。
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