研究課題
本年度は、日本の企業統治に近年重要な役割を果たしている外国人投資家に注目し、外国人投資家と社債の満期までの償還期限との関係について分析を行った。海外では、企業統治制度と負債の償還期限に関する研究は存在するが、企業の財務データから負債の償還期限に関する変数を作成しており、新規発行の社債の償還期限に関する分析はなされていない。日本では、企業の財務データから負債の償還期限を知ることはできないので、新規発行の社債の償還期限と企業統治に関する研究はされているが、かつての企業統治の主役であった銀行に焦点を当てている。そのため、銀行の役割が低下した後に急激に増加した外国人投資家についての分析はされていない。このような先行研究の状況からも本研究の独創性を知ることができる。実証分析の結果、外国人投資家の持株比率が高い企業は満期までの償還期間が比較的長い負債を発行できることがわかった。これは、企業統治システムとしての外国人の経営者監視活動は、債券投資家にとって好意的に判断された結果、当該企業は満期の期間が長い負債を発行できるということを意味する。驚くべきことに、この結果はアメリカのデータで分析して得られた結果とは逆の関係を示している。つまり、企業統治システムと負債の償還期限との関係についての新たな視点を提供することができたのである。このことは、本研究で得られた結果というのは、学術的に非常に重要で興味深いことを意味している。
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Discussion Papers in Economics and Business, Osaka University
巻: 11-35