1.前年度末にインドで実施したフィールド調査に基づく論文執筆 インド・アンドラプラデシュ州の小農組合が綿花の将来的な輸出に向けてフェアトレード・有機認証の取得を目指す過程で、両認証は共に遺伝子組み換え種子(GMO)の利用に反対しているにもかかわらず、皮肉にもGMOの普及に加担してしまう事実を明らかにし、その背景にある両認証の問題を論じた。同論文は国際学術誌Geoforumに投稿し、受理された。 2.フィリピンにおけるフィールド調査の実施、 フィリピン・ネグロス島にて予備調査(1週間)及び本格調査(1か月間)を実施し、元農園労働者から構成されるサトウキビ生産者組合、及び加工された砂糖の海外フェアトレード・有機市場への輸出を仲介する企業の活動について一次データ(主に質的)を収集した。 3.同フィールド調査から得られたデータの分析及び論文執筆 同組合の共同耕地におけるサトウキビの有機栽培及び海外市場への輸出は、有機認証が小農のために活用された数少ない成功例である。有機への転換が農地改革、すなわち農地の取得とほぼ同時に共有地で開始されたこと、そして開始直後から海外の市場とつながったことが成功の要因と言える。また、農地取得料の支払いのため生計多様化を図ることが組合員には不可欠だが、サトウキビ栽培の共同経営とフェアトレード市場から還元されるプレミアムが農業と非農業活動の両立を可能にしたことも明らかになった。フェアトレード・有機認証の新たな役割を理論化した論文を国際学術誌に投稿中(審査中)である。 4.その他の関連論文の執筆及び発表 他の事例研究も踏まえて、バリュー・チェーンの視点からの分析、フェアトレード認証取得を目指す過程において目的が社会的公正から経済的効率に変化していく様相に焦点を当てた論文を執筆した。刊行したものに加えて、1本が投稿中(審査中)である。
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