研究概要 |
本研究の目的は、経済格差の拡大が、有権者の知識・態度を通じて再分配政策にどのような影響を与えるかを明らかにすることにある。先進民主主義諸国の間で再分配される金額が著しく異なる理由を、有権者というミクロなレベルでの分析を通じて理解することを目指してきた。そのために、政治経済学に基づく数理モデルを提示し、そのモデルをOECDに加盟している各国の世論調査データによって統計的に検証するという手順で研究を進めた。2011年度は、2010年度までに収集したデータを分析する作業をから始め、不足するデータの収集も行った。その後、経済格差に対する知識が正確でなくなる状況を表すモデルを構築し、集めたデータを使って検証した結果、経済格差を過小評価する有権者は再分配の縮小を望み、経済格差を過大評価する有権者は再分配の拡大を望む傾向が確認された。 研究成果として、以下の3つの学会報告を行った。(1)"Redistributive Consequences of Economic Inequality"(Political Stuides Association, London. 2011年4月).(2)「OECD諸国における経済格差と投票率」(日本選挙学会,関西学院大学.2011年5月).(3)"Perception of Economic Inequality and Demand for Redistribution"(Southern Political Science Association, New Orleans, LA. 2012年1月).さらに、研究成果の一部を2012年6月に開催される日本比較政治学会ならびに2012年8、9月に開催されるAmerican Political Science Associationの研究大会で報告する。
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