研究概要 |
主に提携型ゲーム理論を用いて,インターネット上のような主体の参加が自由かつ参加者の識別が容易でない環境における,余剰配分問題を理論的に考察した.近年のインターネットオークションの市場規模の拡大にみられるように,このような環境における余剰配分問題の重要性は高まっている.こういった環境に特有の問題として,オークションでの商品の販売者が,異なるIDを用いて購入希望者のふりをして入札し商品の値段を釣り上げるような行為が挙げられ,こういった行為の取り締まりは困難である.本研究では,まず,一主体が複数のIDを取得し,自身が所有する余剰を生み出すリソースを複数IDに振り分けることで,合計してより望ましい余剰配分を得る,また,複数主体が一つのIDを共同利用し,リソースを集約することで合計してより望ましい配分を得る,といった種の行為が行為者にとって有益でない余剰配分の方法を考察した.このような余剰配分方法に基づいた取引制度を構築することで,先に挙げたような不正行為を取り締まる必要なく,結果としてそれを防ぐことができる.しかしながら,「余剰を余らせることなく分ける」等の他にも望ましいとされるいくつかの基準を同時に満たし,かつ前述のIDによる操作を防ぐ配分方法の考案は通常の余剰配分問題では困難であることが示された.次に,主体の参加が自由である面に注目し,「どういった性質をもつ主体の参加・離脱が他主体の配分に影響を与えないか」という観点から,いくつかの著名な余剰配分方法を統一的に特徴付けた.この結果から,それらの余剰配分方法にかんして今まで知られていなかった,それらの類似性と差異が明確になった.
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