研究課題
本研究課題を通じた研究成果は、本務校である南山大学のワーキングペーパーとして取りまとめ、平成23年度に公刊を行った。ここで、私は銀行部門を考慮に入れた小国開放経済モデルを構築し、同モデルを用いてASEAN諸国の為替相場制度選択が、モデルから得られる示唆と整合的なものか否かを検証した。申請当初はモデルから得られるシミュレーション上の示唆を得るところまでを目標としていたが、現実のASEAN諸国が採用する為替相場制度選択の検証まで踏み込めた点は、申請時よりも前進した点であると考えている。一般的な小国開放経済モデルでは、通貨同盟や固定相場制度等の硬直的な為替政策は、変動相場制よりも劣るものと結論付けられてきた。しかしながら本論では小国内における銀行活動を一般の小国開放経済モデルに導入し、モデルのパラメータ設定をASEAN諸国のデータに基づいて行うことで、硬直的な為替相場制度が変動相場制よりも優位に立つ場合があることを示した。とりわけ、ASEAN諸国のなかで硬直的な為替政策を採用する国々について、固定相場制が変動相場制よりも経済厚生上優れた制度となり得るとの結論を導いた。こうした結論はこれまでの先行研究では得られていないものであり、一定の貢献を達成することが出来たと考えている。同研究成果は現在英文の査読付学術雑誌に投稿中である。また、これらの研究成果を踏まえて現在複数の拡張研究に取り掛かっており、これまでの貢献と今後の研究推進と関連して非常に有益な成果を得ることができたと考えている。
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Society of Economics Working Paper Series, Nanzan University
巻: No.47 ページ: 1-29