研究概要 |
うつ病は大学生にとって重大な精神健康上の問題である。また,うつ病は大学生の自殺の主要なリスクファクターであることも知られている。本研究では大学生のうつ病と自殺の予防を目標としたプログラムを認知行動療法に立脚して開発し,その有効性を検討することを最終目標としている。 本年度は,プログラムの開発に先だって大学生のうつ病と自殺のリスクを高める認知行動的リスクファクターの検討を行った。抑うつ症状と自殺念慮,およびさまざまな認知行動的要因のアセスメント(自動思考,社会的スキル,快活動,ストレスフルな出来事)を実施した。抑うつ症状と自殺念慮を基準変数とし,上述の認知行動的要因を説明変数とした分析(なお,ストレスフルな出来事はコントロール変数とした)において,これらの要因が大学生の抑うつ症状と自殺念慮に及ぼす影響を明らかにした。上記の説明変数はいずれも認知再構成法,社会的スキル訓練,行動活性化といった認知行動療法の個別の技法に対応するものであり,直接的に変容を試みることが可能である。 次年度には本年度に明らかにされたリスクファクターに働きかける介入要素を組み合わせ,大学生のうつ病と自殺のリスク低減を目指したターゲットタイプの予防プログラムを作成する。このプログラムを,スクリーニングによってうつ病のリスクが高いと判別された大学生に適用した上で,介入前,介入後,フォローアップの3時点でアセスメントを実施し,介入効果の判定を行う。
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