研究成果 本研究は方面委員の活動に関する史資料の実証的検討をもとに実践活動分析を長期的に行い、(1)包括的かつ詳細な活動内容の把握、(2)活動展開過程及びその要因を明らかにすることを通して、(3)今日の民生委員による活動促進にかかわる要因を探ることを目的とするものである。 平成22年度は研究目的(1)で示した内容を中心に研究を行った。その際、分析の前提となる作業として、方面委員制度の政策・政治上の位置付けの変遷に関して、地方毎に創設されていった方面委員制度が、本研究で焦点づける大阪府の制度を参考にされながら全国的制度へと統一された流れについて把握を行ったことに加えて、経済状況を中心として委員活動をとりまく状況の把握を行った。これらの把握のもと研究実施計画に示したとおり、『大阪府方面委員事業年報』の昭和初期にあたる時期の分析作業を行いつつ、方面委員による詳細な活動内容の把握を行った。 また、方面委員による活動の広がりに応じて、当時の社会事業にケースワークの導入を試みる諸論者のなかで方面委員にケースワーカーとしての役割を期待するものや、方面委員による実践活動にわが国のケースワーク実践をみるものがあったことから、わが国にケースワークの導入を試みた際の諸論者の意図やそれらにまつわる議論を検討することは、今日のケースワークを考える際の一助となるため、方面委員とケースワーク導入に関する言説分析について、学会発表および論文執筆を行い、研究結果の一部として公表を行った。さらに、大阪府の新任民生委員・児童委員の方々を対象とした研修会において民生委員の歴史について説明する機会を得ることができたため、以上の作業から得た現時点での知見をもとに、現在の民生委員・児童委員の活動の歴史的流れ及び活動促進要因を提示することができた。
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