研究課題
研究成果本研究は方面委員の活動に関する史資料の実証的検討をもとに実践活動分析を長期的に行い、(1)包括的かつ詳細な活動内容の把握、(2)活動展開過程及びその要因を明らかにすることを通して、(3)今日の民生委員による活動促進にかかわる要因を探ることを目的とするものである。平成23年度は前年度を踏まえたうえで、研究目的で示した内容をもとに研究を進めた。具体的には昭和期の『大阪府方面委員事業年報』の分析作業による、詳細な活動内容の把握を行うことを通して、活動が展開した要因の分析を行った。研究成果として〔1〕住民が抱える「子どもの養育に関する問題」への対応、〔2〕恐慌期における方面委員活動の展開の2点に焦点づけて論文執筆や学会発表を行った。また〔3〕方面委員による地域住民に対する活動の特徴の検討を行い、国際学会で発表及び論文執筆を行った。〔1〕住民が抱える「子どもの養育に関する問題」が「経済的問題」と「医療に関する問題」と関連して生じる問題であったことから、方面委員は家族の生活を成り立たたせるために必要な物資や医療、制度を状況に合わせて提供しつつも、子どもを養子や奉公に出す等を行っていたことが明らかになった。〔2〕昭和期の活動の展開を検討した結果、取扱数の増加や対応する問題の広範化がみられたとともに、医療資源が制度創設期よりも増加したことから、住民の抱える「医療に関する問題」に対してより多くの資源提供が行えるようになっていた。また方面委員は、方面委員自身の関係者に加えて住民の関係者も「資源」とするための活動を積極的に行っていた。〔3〕方面委員による実践活動の特徴として、住民の状況・思いを代弁し、交渉という資源発掘活動を行っていたこと、住民と資源をつなぐ活動を積極的に行っていたこと、住民がおかれた状況や問題が発生した経緯に加えて住民の思いの確認を重視していたことの3点があることを示した。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
奈良教育大学紀要(人文・社会科学)
巻: 60巻1号 ページ: 9-18
Proceeding of 21th Asia-Pacific Social Work Conference, 21th Asia-Pacific Social Work Conference
ページ: 596-605