平成22年度はロボット分野のイノベーション誘発コンテストであり、10年以上の実施実績を有するロボカップを対象にデータ収集・整備と基礎的な解析を進めた。具体的には、ロボカップ実施に併せ開催されてきた国際学会の論文集に収録された論文をもとに引用や被引用関係等の書誌情報のデータベース化を進め、定量的な分析、引用関係に着目することによって抽出したロボット分野のイノベーション・ネットワークの分析を行った。一般にはイノベーション誘発コンテストは、事前に提示された特定の社会的・技術的課題の解決に向け貢献した、あるいは最も優れた成果を収めた研究や技術に対し、懸賞金を授与するという、研究開発活動促進の枠組みの一つであり、懸賞金等の経済的インセンティブにより、研究開発を促進するというものであるが、以上の作業により、通常のイノベーション誘発コンテストと異なり、懸賞金等の経済的インセンティブが働いていない、もしくは低く、かつ、国際学会という研究成果の発表と共有を目的とする場を有するという特徴を有し、それゆえ、研究者の行動規範であるマートン規範、いわゆるCUDOsが反映されていると考えられるロボカップを対象に、通常の研究の枠組みと異なるコンテストが学術活動に与える影響の検証や、近年、研究開発や市場の軸が産業用ロボットからサービス・ロボットに移行しつつあるロボット分野におけるイノベーション過程の検証が可能になる。
|