イノベーション誘発コンテストとは、懸賞金等の経済的インセンティブによる研究開発の促進を目的とした、事前に提示された特定の社会的・技術的課題の解決に向け貢献した、あるいは最も優れた成果を収めた研究や技術に対し、懸賞金を授与するという、研究開発活動促進の枠組みの一つである。今後、基礎・応用研究にも、研究者間で互いに競争しつつ研究を進めるコンテストの仕組みが広く利用される可能性があるものの、コンテストが研究活動に与える影響や効果に関する実証研究は存在しない。本研究では、平成23年度は前年度に引き続き、ロボット分野のイノベーション誘発コンテストであり、10年以上の実施実績を有するロボカップに関連する各種論文の書誌情報の整備・更新を行うと共に、さらにロボット分野の代表的な学術誌の掲載論文の書誌情報の収集・整備を進めた。そして収集・整備したデータをもとに限定的ではあるものの、計量書誌学の手法に従い研究者の論文数 (「研究生産性」の指標)と論文の被引用数 (「研究の質」の指標)の二面で、通常の研究の枠組み (研究助成)と異なるコンテストが研究活動に与える影響の検証を試みた。その結果、コンテスト参加者は、短期的には研究パフォーマンスが低下する傾向があるものの、その後は研究パフォーマンスが高くなる傾向が確認された。本研究は、従来、検証される機会が少なかったロボット分野を対象としたイノベーション研究という点でも意義を有する。
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