本研究の目的は、日本の株式市場においてバリュー・プレミアムが生じている原因を明らかにすることである。特に、企業のキャッシュフローのタイミングやキャッシュフローに関するリスクによって、バリュー株のプレミアムを説明しようとしている。 平成22年度には、株式のキャッシュフローのタイミングを測る指標として株式デュレーションを採用し、資産価格と株式デュレーションの関係について実証分析を行った。株式デュレーションとは、債券デュレーションを株式に対して応用したものであり、株式デュレーションが短いほどキャッシュフローのタイミングが早く、投資資金の回収までの期間が短いことを示している。分析の結果、まず、バリュー株は株式デュレーションが短く、グロース株は株式デュレーションが長くなっていることが確認された。さらに、株式デュレーションの長さによって分類されたポートフォリオの収益率を用いて、デュレーションに関するリスクファクターを作成し、株式ポートフォリオの収益率を説明することができるのか、分析を行った。その結果、1996年までのサブサンプルにおいてはデュレーションに関するリスクファクターが説明力を持つものの、1996年以降のサブサンプルでは説明力を失うことが明らかになった。さらに、このようなデュレーションファクターの性質は、Fama-FrenchのHMLファクターの性質と非常に似ていることが明らかになった。これらの結果は、バリュー・プレミアムがキャッシュフローに関するリスクによって説明できる可能性を示唆している。
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