超巨大ブラックホールの形成メカニズムは未だ謎に包まれており、宇宙物理学における最重要テーマの一つである。超巨大ブラックホール形成の難しさは、銀河中心の十分コンパクトな領域に質量を多量に集中させる必要があるところにある。この問題を解決するために、異なる空間スケールの現象を物理的に結び付けることで、銀河スケールからブラックホール近傍までの質量降着メカニズムを統一的に理解できる多階層連結モデルの構築が本研究の目的である。準備研究として、銀河中心で起こる超新星爆発で駆動される乱流粘性による角運動量輸送を考慮し、銀河スケール(キロパーセク)から数パーセクまでの質量降着過程をモデル化してきた。今年度は、このモデルをさらに発展させ、銀河スケールからのガス供給量やガス供給の時間スケールの違いが、超巨大ブラックホールと銀河の進化とどのように関係するのか調べた。計算の結果、低質量銀河ほど最終的に形成される超巨大ブラックホール質量の分散が大きくなることが分かった。また、より小さい超巨大ブラックホール質量を持つ銀河ほど、ゆっくり成長してきたことが予想される。さらに、ガス供給の時間スケールとブラックホール成長の時間スケールが同程度となる場合にのみ、超巨大ブラックホールと銀河が共進化することが明らかになった。言いかえると、2つの時間スケールの大小関係が、超巨大ブラックホールと銀河のどちらが先に進化するかという問題と密接に関係することを示唆する。この成果は現在投稿準備中(Kawa katu and Wada 2011)である。
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