研究課題
超巨大ブラックホールの形成メカニズムは未だ謎に包まれており、宇宙物理学における最重要テーマの一つである。超巨大ブラックホール形成の難しさは、銀河中心の十分コンパクトな領域に質量を多量に集中させる必要があるところにある。しかしながら、銀河からブラックホール近傍までのガス降着過程が未だほとんど分かっておらず、計算機パワーが増大した今日でさえ、全ての物理過程を数値シミュレーションにより取り扱うことは難しい。この問題を解決するために、異なる空間スケールの現象を物理的に結び付けることで、銀河スケールからブラックホール近傍までの質量降着メカニズムを統一的に理解できる多階層連結モデルの構築が本研究の目的である。これまで申請者等は準備研究として、銀河中心で起こる超新星爆発で駆動される乱流粘性による角運動量輸送を考慮し、銀河スケール(キロパーセク)から数パーセクまでの質量降着過程をモデル化してきた(Kawakatu&Wada2008,2009)。今年度は、このモデルをさらに発展させ、母銀河からのガス供給量とガス供給継続時間の違いが、超巨大ブラックホールと銀河の共進化とどのように関係するのか調べた。計算の結果、超巨大ブラックホールが軽いほど、最終的に形成されるブラックホール質量はガス供給継続時間に強く依存し、活動銀河核の光度は間欠的になることが明らかになった。さらに、母銀河からのガス供給継続時間とブラックホール成長時間(乱流粘性によるガス降着時間)の大小関係が、超巨大ブラックホールと銀河のどちらが先に成長するのかという問題と密接に関係することが分かった(Kawakatu&Wada論文投稿準備中)。
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The Astrophysical Journal
巻: VOL.750(印刷中)(未定)
Monthly Notices of the Royal Astronomical Society
巻: Vol.417, No.4 ページ: 2562-2570
DOI:10.1111/j.1365-2966.2011.19422.x
巻: Vol.270, No.2 ページ: 120-131
DOI:10.1088/0004-637X/730/2/120
http://www.ccs.tsukuba.ac.jp/Astro/Members/kawakatu/