本研究では、時空メトリックの全ての成分を取り入れた上で、高速で自転するブラックホールを含んだ、ブラックホール-中性子星連星の準平衡解を構成することを目指している。そして最終目標として、連星間距離が離れているところから中性子星がブラックホールによって大きく潮汐変形され、質量放出を開始する直前までの物理過程を調べることを掲げている。そのためにはまず定式化を行うことが必要であるが、この部分は今年度の研究で完了した。引き続き、本研究で最も難しい部分の一つである、ブラックホール時空の解法に取り組んだ。最終的には連星系内でブラックホール時空を解く必要があるが、ブラックホールが係わる部分の定式化が正しく行われているか、その部分を正しく解くことができるか、そして、高速で自転させることができるかを調べるため、まずは孤立したブラックホールについての研究を行った。ブラックホールの特異点の扱いについては、数値計算領域から除外するために、ブラックホールを見かけの地平線のすぐ内側で球状にくり貫き、そこに境界条件を課して解くという方法を採用した。最も興味がある物理量の一つである自転角運動量については、ブラックホールが持つことのできる最大値付近まで増加させることができた。このことから、高速で自転するブラックホールを含む連星系を構成することが可能であると期待される。現在、その連星系の準平衡解を求めるため、中性子星に係わる部分を組み込んだ数値計算コードを開発中である。
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