研究課題
近年、頻発する異常気象が社会経済に甚大な被害をもたらし、数値モデルを用いた異常気象予報(季節予報)への需要が高まる中、世界各国の気候モデルがこの新しい試みに乗り出している。本研究では、大気海洋結合モデルMIROCを用いて季節予測システムを構築する試みを行った。前年度(H22)に構築した実験的システムを基に予測スキルを低下させる原因を精査した結果、予測初期値の作成過程に改善の余地があることが分かった。そこで平成23年度は、初期値化の手法を見直した上で高解像度化、予測アンサンブル数増加等のシステムの高度化を図ることで、世界気候研究計画(WCRP)の季節予測仕様に準じた季節予測システムを完成させた。1979年以降の事後予測結果を観測された気候と比較したところ、異常気象の原因となるエルニーニョ現象において、その予測スキルが飛躍的に向上し、世界最先端の気候モデルに匹敵する性能を確認することができた。次に、新システムによる予測プロダクトを実際に発生した異常気象の予測に適用可能であるかどうかを調べた。2009/2010年冬季に北半球中緯度を襲った寒波は、エルニーニョ現象、北極圏の気圧変動、成層圏の昇温現象が相互に作用し合った結果であったが、予測システムにおいては、エルニーニョ現象については比較的良く予測されていたものの成層圏の昇温のタイミングを予測することは難しく、本システムにおいて異常気象として予測することが困難であることが示唆された。更に、2011年夏~秋にかけてのタイの大洪水の原因となった降雨の予測可能性を調べた。このようにスケールの小さな降雨システムはモデルで直接予測することは難しいが、本研究では太平洋やインド洋の大規模な海面水温変動との統計的な関係を使って予測結果をダウンスケーリングする手法を考案し、この時期のタイ付近における降雨偏差に予測可能性があることを示すことができた。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (5件)
Journal of Climate
巻: 25(受理2011年9月) ページ: 2341-2355
10.1175/2011JCLI4244.1
巻: (受理2012年1月)(印刷中) ページ: (受理2012年1月)
10.1175/JCLI-D-11-00233.1
土木学会論文集B1(水工学)
巻: Vol.68 ページ: I_1369-I_1374
Journal of the Meteorological Society of Japan Special issue on the recent development on climate models and future climate projections
巻: (掲載確定)
Climate Dynamics
10.1007/s00382-012-1351-y