研究課題
本課題では、断層に特徴的にみられる鉱物(特に粘土鉱物)相転移反応の機構解明を主目的として研究を行った。このような反応は、断層内で起こる岩石の粉砕化プロセスや断層運動に伴う摩擦発熱に励起されて促進されるものと考えられる。したがって、断層物質の解析を通して断層運動の実態の解明につなげるためには、このような反応機構の詳細を理解することは非常に重要な意義を持つと考えられる。昨年度、浅部化石付加体である房総-三浦付加体に発達する前縁断層(白子断層)を対象として、断層ガウジとその周辺堆積物中の粘土鉱物のXRD分析を行い、約10%程度のイライト化反応が断層ガウジ内で局所的に進んでいることを見出した。またXRDパターンの詳細な解析により(結晶のサイズ分布解析)、イライト化反応が断層運動に伴う物質の微細化の効果よりむしろ発熱の影響を強く受けていることを明らかにした。さらにイライト化反応の速度論を用いた解析から、断層運動時の最高到達温度は少なくとも470℃前後、最高で550℃程度に至るような断層運動だったと予想される。本年度は、同じような造構性作用によって形成されたと考えられる浅間断層でもサンプリングを行い、白子断層と同様に断層内で局所的なイライト化があったことが分かった。ただし、反応の進行は白子断層よりも小さく約6%程度であり、断層運動時の最高到達温度も白子に比べて10℃程度低かったと考えられる。これらの結果は、摩擦発熱を引き起こすような高速のすべりが沈み込み帯浅部まで伝達してきたことの証拠と考えられ、昨年の東北沖巨大地震にみられたような津波を引き起こす浅部すべりは、沈み込み帯浅部で普遍的に起こりうる可能性を示している。
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巻: (掲載確定)
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