ます前年度から研究を行ってきたPoisson点過程に従って多項式減衰するポテンシャルを配置した放物型Anderson模型について、未解決になっていた1次元で媒質を固定した場合の解の漸近挙動を決定した。これは当初想定していたよりは微妙な問題であることが判明したが、先行する研究でこれまで使われていた"谷"の概念を、ポテンシャルの明示的な形での定義から生成作用素の固有値を用いた少し弱い形に拡張することによってその存在を示すことができ、解決に至った。またこの過程において、より重要な問題である「残っている熱量の分布」を決定するために有用と思われるいくつかの予備的な結果を得ている。 次に京都大学大学院理学研究科の吉田伸生准教授と共同で、人口成長を表すある種の確率モデルの研究を行った。具体的には空間の各点の人口を無限のサイズを持つベクトルとして表したとき、その時間発展が独立同分布な無限行列をかけることで実現されるような成長模型である。本課題の主要な対象であるランダム媒質中の高分子模型の自由エネルギーが、上記のような人口成長モデルの総人口と対応することは古くから知られていたが、後者については基本的な問題が未解決のまま残されている。我々は空間構造を持たない人口成長モデルでは広く成り立つことが知られている「人口は絶滅するか指数的に増加するかのどちらかである」という事実を空間構造を持つモデルに拡張することに成功した。 以上の結果についてはいずれも論文にまとめ、学術雑誌に投稿中である。
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