研究概要 |
主に,Ariki-Koike代数(G(r,l,n)型の複素鏡映群に付随するcyclotomic Hecke代数)とcyclotomic q-Schur代数のモジュラー表現論を中心に研究した。 特に,異なるランクのcyclotomic q-Schur代数の有限次元表現のなす圏の間に,誘導,制限関手を定義し,それらが互いに左かつ右随伴であることを示した。また,cyclotomic q-Schur代数の標準加群(余標準加群)に誘導,制限関手を適用した加群の性質を調べた。その応用として,cyclotomic q-Schur代数の有限次元表現のなす圏の各ブロックへの射影を用いることによって,誘導,制限関手を細分化することで,これらの関手を伴った(ランクを全て動かした)cyclotomic q-Schur代数の有限次元表現のなす圏を用いたhigher levelのFock空間の圏化を与えた。さらに,この圏化を通じ,cyclotomic q-Schur代数の表現と,Fock空間のそれぞれの性質の関係について考察した。 また,cyclotomic q-Schur代数の有限次元表現のなす圏と対応する有理Cherednik代数の圏0とが,Ariki-Koike代数の準遺伝被覆として同値になる場合に,今回定義した制限,誘導関手が,Bezrukavnikov-Etingofによって定義された,有理Cherednik代数の圏0の間の誘導,制限関手と(準遺伝被覆としての同値を通じて)同値となることを示した。このことにより,今回のcyclotomic q-Schur代数の有限次元表現のなす圏を用いたFock空間の圏化は,Shanによって与えられている有理Cherednik代数の圏0を用いたFock空間の圏化の"ドミナント版"とみなすことが出来る。両者の違いは,標準加群を誘導(制限)した時のfiltrationの現れ方に見ることが出来る。
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