研究概要 |
1.平成22年度はシミュレーションの物理環境を整えることが大きな目標であった。まずTanaka(J. Comput. Phys.,111,381-389,1994)が開発したコードを情報通信研究機構(NICT)のスーパーコンピュータ上で動くようにした。NICTではOpenSpaceNetというクラウドコンピューティングシステムが平成22年10月から稼働を始め、スーパーコンピューターはこのシステムに組み込まれた。OpenSpaceNetを九州大学から利用できるよう、またシミュレーション結果の可視化や解析に使えるよう、Linuxワークステーションを立ち上げた。シミュレーションコードを修正して、磁気双極子が傾いている場合と電離圏コンダクタンスが一様な場合を扱えるようにした。しかしシミュレーション結果の可視化ツール開発はまだ不十分である。 2.磁気圏磁場トポロジー分岐の解明(特にサブストーム時)が本研究の課題であるが、シミュレーション環境整備の途上で行った計算で、研究代表者が過去に行っていた研究に示唆を与えるものがあった。代表者は惑星間磁場が北向き時の磁気圏対流を観測面から研究していたが、その時の解釈を支持する結果がシミュレーションで得られた。惑星間磁場北向き時には、南向き時とは逆向きの対流セル対が極域電離圏に現れるが、その一方が閉じた磁力線上にあることがシミュレーションで確かめられた(観測では制約が多く確実ではなかった)。これは開いた磁力線と閉じた磁力線が起こす磁力線再結合(交換型磁力線再結合)に起因すると理解される。太陽表面で交換型磁力線再結合が存在することは知られているが、磁気圏での交換型磁力線再結合は非直観的であり想像すらできない研究者が多い。そのような中、数値モデリングで交換型磁力線再結合の存在が確実になった意義は大きい。可視化ツールの開発が進めば、この成果は本研究課題とは別にまとめる。
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