前年度に計算機環境を調えることができたので、課題である磁場トポロジーを解析・可視化する手法の開発にとりかかった。しかし結論を先に言うと開発は成功していない。アルゴリズムは2つに分かれる。アルゴリズムの第1段階は磁気中性点の探索であるが、この部分の開発は一応成功した。しかし問題点も残る。まず、グリッド間の磁場データ補間(線形補間を採用)がどの程度信用できるのかわからない。本研究で用いているシミュレーションコードは変形極座標格子であるので、地球から遠くなるほど格子間隔が大きくなる。そのような場所では補間に限界があると想像できる。また、磁気中性点かどうか判定する閾値によって磁気中性点の数が大きく変わる。数値的に厳密な磁気中性点になることはまずない。よって閾値を設ける必要があるが、その基準が明らかでない。アルゴリズムの第2段階は磁気中性点同士を結ぶ磁力線(セパレーター)を発見することであるが、この部分の開発が成功していない。セパレーターを見つけるためには、ある磁気中性点から広がる磁気面を追跡する必要があるが、とれが数値的に極めて困難であることが次第に明らかになった。そこでかねてから考えていた研究方針の手直しを行った。すなわち、それまで磁場トポロジーがある程度わかっている惑星間空間磁場北向き時の磁気圏を題材に上述のプログラム開発を行っていたので、厳密なトポロジー解析は置いておき、トポロジーから予想される磁力線再結合の様態やその結果生み出される磁気圏プラズマ対流について議論することにした。惑星間空間磁場の向きを変えて何通りかシミュレーションを行ったところ、真北から35度の角度では、昼間側のみならず(観測ではあまり知られていない)夜側においても惑星間空間磁場朝夕成分に依存する夜側電離圏対流が存在することが判明した。このシミュレーション結果は交換型磁力線再結合で解釈できる新知見である。
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