研究課題
平成22年度の研究では電離圏-地上を研究の対象領域とし、Pc5周期帯(1.7~6.7mHz)地上磁場変動(脈動)は電離圏の電場(電流)によって励起されている事がわかった。平成23年度ではさらに、電離圏や地上までの脈動の侵入過程を明らかにすることを目的とし、太陽風の影響を直接受け、電離圏の上部に広がる磁気圏も研究の対象領域とした。磁気圏で観測される脈動を特定するため、JAXA(航空宇宙研究開発機構)の人口衛星「きく8号」が静止軌道(高度約36,000km)低緯度で観測した磁場変動データを解析した。人工衛星の磁場観測データは脈動がトロイダルモード(磁力線の方位角方向の動き)であるか、ポロイダルモード(磁力線が圧縮する動き)であるか区別する事ができ、発生要因が異なると考えられる2つのモードをそれぞれ分けて議論する事ができる。また、静止軌道の低緯度ではPc5より周波数の高いPc4(6.7~22mHz)が観測されやすいため、Pc4を研究の対象とした。結果、トロイダルモードは夕方の時間帯でよく発生し、ポロイダルモードは昼側でよく発生する事がわかった(2011AGU fall Meeting, San Francisco, USAにて報告)。この事から、トロイダルモードは磁気圏と太陽風のプラズマの速度差で励起されるKelvin-Helmholtz不安定性が発生要因、ポロイダルモードは磁気圏境界の前面(太陽側)に存在する衝撃波付近で発生する波動が励起源と考えられる。さらに今後は、それぞれのモードが磁気圏内で特定された時の地上でのPc4の発生を調べ、磁気圏から地上までの脈動の伝搬経路を明らかにする。脈動現象の伝搬経路が明らかになれば、磁気圏の構造理解に大きく貢献できる。さらに、これまの電離圏-地上の研究と併せ、磁気圏-電離圏-地上の多圏間相互作用を理解することができる。
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Journal of Geophysical Research
doi:10.1029/2011JA017453
J.Geophys.Res.
巻: (Web)
doi:10.1029/2010JA016042
International Journal of Geophysics Volume 2011
doi:10.1155/2011/848467
http://news.sci.kyushu-u.ac.jp/jokrozflp-20/