「ホモロジカル予想の研究とその応用」をテーマとして他分野、特に数論幾何への応用を見込んで研究を推進した。大雑把に言うと「ホモロジカル予想」とは、1970年代に確立されたフロベニウス射の手法を用いた可換環の研究から派生した一連の予想達のことであり、幾何学的には代数多様体と呼ばれる、多項式で定義された図形の上の二つの部分多様体の交叉理論と密接な関係にある。研究代表者はホモロジカル予想の研究の過程で得られた、様々な手法を可換環論の他の問題に適用するに留まらず、ゼータ関数の特殊値と代数体のイデアル類群との関係を調べる岩澤理論の重要な問題を考える為のアプローチを開発するなど、これまで殆ど組織的に行われなかった新分野の開拓に心血を注いでいる。既に幾つかの成果が得られ、その研究成果を米国や国内の研究集会において発表を行った。これらの研究の背後に共通する数学的なアイデアは特異点と呼ばれる、幾何的には滑らかではない集合の様子を理解する事にある。また上で少しだけ述べた、交叉理論も特異点の構造と深く関係する。特異点そのものは複雑な様相を持つので、それをより滑らかな構造で近似する事で調べ易くなる事がよくある。代数幾何における広中の特異点解消定理はその実例である。研究代表者は特異点の特性を生かした方向で研究を行っている。
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