惑星の形成過程の解明は、地球科学・生命科学など、幅広い分野に大きく影響する、現代天文学最大のテーマの1つである。惑星は星の周囲を取り巻く原始惑星系円盤が消失する中から生まれるため、円盤消失メカニズムの解明は、惑星の形成過程を明らかにする上で極めて重要である。初年度までに確立した、比較的観測が容易で高感度な近赤外線のみの観測により、星生成領域中で中質量星(2-6太陽質量の質量を持つ星)について円盤の残存率(以下、JHK IMDF)を導出する手法を用いて、太陽近傍(距離約3kpc内)に存在するこれまでによく知られた非常に多く(~30個)の星生成クラスターについて、JHK IMDFを導出した。求められたJHK IMDFは、クラスターの年齢とともにおよそ指数関数的に減衰することが分かり、減衰曲線のフィットから中質量星のcharacteristic decay timescaleが、1.5±0.2Myrと初めて定量的に見積られた。これは、小質量星(~0.1-1太陽質量)におけるdecay timescale(約3Myr)と比べておよそ半分であり、decay timescaleは中心星質量(M_*)に対してM_*^{-0.5±-0.2}に比例するという依存性となることがわかった。また、円盤の寿命について、近赤外線でトレースされる最も内側の円盤と、中間赤外線でトレースされるやや外側の円盤の進化には約4Myrの有意な差が存在することも分かった。このような時間差は小質量星では見られなかったことから、この長い"transient phase"は中心星の質量が大きいほどplanet formation rateが高いこと、小質量星に比べてinner diskが速く消失することなど、中質量星に、特有の円盤進化を示唆した。 今後、ここで確立された結果を用いてく銀河系全体、更には系外近傍銀河の非常に幅広い領域について初めて円盤研究の展開が期待される。
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