本研究では太陽黒点を含む活動領域とそれを囲む静穏領域での磁束収支を調べることで黒点崩壊過程及びそれに伴う静穏領域への磁束供給過程の解明を目的としている。変化の激しい活動領域の磁場の時間発展であっても、高空間分解能・高精度・連続観測が可能な「ひので」可視光磁場望遠鏡で得たデータを用いて磁束収支を計算する方法は既に確立できている。平成21年度までは太陽活動が低調でほとんど活動領域が出現しなかったが、平成22年度は様々なタイプの活動領域が出現して「ひので」でその時間発展を捉えることに成功している。「11.研究発表」で示した研究会で招待講演を行い、磁束収支計算を基にした最新の黒点崩壊に関する研究成果を国内外の太陽研究者に示した。一方、「ひので」は視野が狭いためにその周囲の静穏領域の磁場変化は、2010年2月に打ち上げられたNASAのHelioseismic and Magnetic Imager (HMI)等で得られた太陽全面の磁場データを用いて補完する必要がある。HMIの最終校正された磁場データのリリースが遅れているために磁場精度の比較は行えなかったが、空間分解能・時間分解能の観点で磁束収支の計算に十分使えることを確認した。HMIは4096x4096ピクセルのCCDで太陽全面の磁場を45-90秒間隔で取得するため、解析する上でデータ容量の大きさが問題であった。平成22年度の予算で購入した大容量メモリを搭載したPCを用いることで、必要な領域を切り出せば磁束収支の時間発展を問題なく計算可能であり、平成23年度から本格的に磁束収支計算が行える見通しが立った。
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