氷衛星のテクトニクスに応用できるレオロジーモデルを構築するためには、氷・岩石混合物の塑性変形に寄与する変形機構を明らかにする必要がある。そこで、変形機構を示す結晶特性の変化を申性子回折を用いたその場観察実験により明らかにすることを目的としたが、東日本大震災によってJAEA原子炉が運転停止となり中性子実験を行うことが不可能となったため、本年度は補足実験として、レオロジーモデル構築に必要な氷・岩石混合物の変形強度を調べる実験を行った。 レオロジーモデル構築には、氷・岩石混合物の変形強度や流動則のデータと、それに対する氷や岩石の様々な物性依存性を系統的に調べる必要がある。昨年度は氷粒径に着目し、流動則に対する氷粒径依存性を明らかにした。本年度は、流動則に対する岩石の粒径依存性に注目した。そこで、一軸圧縮実験を行って氷・岩石混合物の変形強度および流動則に対する岩石粒子の効果を系統的に調べた。試料は、H_2O氷と粒径を様々に変化させたビーズを混ぜて作成した。ビーズサイズは直径0.25μmから3mmまでの10種類を用いた。ビーズの質量含有率は、低濃度の30wt.%と高濃度の80wt.%とした。氷の粒径は710μm以下とし、温度は-10℃とした。実験の結果、ビーズ含有率が異なると変形強度や流動則の振舞いが極端に異なることがわかった。低濃度の場合、変形強度や流動則はビーズサイズに関わらず、H_2O氷の強度や流動則とほぼ一致した。一方、高濃度の場合、ビーズサイズで変形強度や流動則が大きく異なることが分かった。20μm以下の場合は強度がH_2O氷に比べて大きくなり、1mm以上の場合は逆に小さくなった。また、100μmから500μmの間では強度が歪速度に依存せずほぼ同じとなり、ビーズが大きくなるにつれて強度が約10MPaから約1MPaまで急激に低下することがわかった。
|