研究概要 |
本研究では,低温原子分子反応の実験的観測を通した宇宙の分子進化過程の解明,及び超低エネルギー衝突における量子的な反応ダイナミクスの解明を目指して『高速中性粒子ビーム源』の開発を行っている.具体的には,一価の負イオンビームに対してレーザーを照射して光電子脱離を誘起し,中性粒子ビームを生成する計画を進行中である 研究スタート初年度となった平成22年度は,中性ビーム生成に必要となる負イオン源(セシウムスパッター型イオン源),及び光脱離用レーザー(Nd:YAGレーザー,波長532nm)の立ち上げを行い,冷却水や電源工事等のインフラ整備,超高真空ビームラインの組み上げ,高電圧プラットフォームの建設及び重畳電源システムの構築を完了した また,効率的に中性ビームを生成・輸送して他のイオンビームと合流させるためのイオン輸送軌道の計算を行った.転送行列を利用した解析的な軌道計算によって輸送パラメータの最適化を行うとともに,漏れ電場等を考慮した実際のイオン軌道シミュレーションを汎用のイオン光学計算ソフトウェア(SIMION 8.0)を利用して行った これらの結果,年度内には装置全体の組み上げ,中性粒子ビーム生成まで達成できる見込みである.以上の様に,本年度の中性ビーム源開発は所期計画以上に進展したため,早期に次のフェイズに押し上げて合流ビーム実験を行うべく,現在準備を進めている.数年内には多種の中性ビームを利用した合流ビーム実験が実現可能となり,関連分野に飛躍的なブレークスルーをもたらすことが期待できる
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