鳥類は、気嚢を備えた呼吸器を獲得するとともに、それを換気するための特有の胸郭構造を進化させた。本研究は、爬虫類の多くが持つ3分節の肋骨の発生と鳥類型の2分節の肋骨の発生を比較することで、どのような発生上の改変が生じて鳥類型胸郭が成立したのかを解明しようとするものである。3分節型肋骨を持つ動物としては、鳥類に系統的にもっとも近い動物の1つであるアメリカアリゲーター(Alligator mississippiensis)を用いている。ここでは、まずアメリカアリゲーターの胚発生をできる限り詳細にモデル生物と比較できるような条件を整えることが成功の鍵となる。平成22年度は、米国ルイジアナ州の研究機関およびシカゴ大学の協力の下、6月にアメリカアリゲーターの卵を入手し、8月までに各発生段階の胚を固定した。Ferguson Stage(FS)11-22の胚(107個体)は組織切片用にSerra's Fixativeで固定し、FS22-28(12個体)は透明標本(AA染色)用にホルマリンで固定した。その中からFS11、13、15、17、19、22の各発生段階の組織切片用サンプルを用いて、胸郭部分を連続切片とし、免疫組織化学法で神経を可視化した後、3次元再構築ソフトを用いて筋、肋骨、肋間神経の空間的分布パターンの変化を明らかにした。これにより、ワニと鳥類の間で胸郭の筋骨格系の発生過程を比較し、対応関係を詳細に明らかにする基礎ができあがった。
|