研究概要 |
泥質堆積物を構成する粘土粒子の配列様式は,従来,泥質堆積物の形成プロセスや続成作用の指標として検討されてきた.このような粘土ファブリックの観察は,主に走査型電子顕微鏡(SEM)が用いられる.SEM観察では,試料は乾燥していることが条件のため,未固結の含水泥質堆積物の場合,乾燥処理が行われることが多い,従来,このためのいくつかの乾燥方法が提案されてきた.しかし,それらの乾燥方法によるSEM観察像の特徴について,系統的な比較・検討は必ずしも十分に行われてはいない。そこで,試料の含水率に注目し,乾燥法によるSEM観察像の特徴について検討した.特に,(1)試料を冷凍庫で凍結させた後に真空凍結乾燥機を用いる乾燥法,(2)食品の冷凍用に開発されたCell Alive System(株式会社アビー)により急速凍結させた後に,真空凍結乾燥機を用いる乾燥法(2)試料中の水をアルコールと置換させた後に液体窒素で凍結させ,簡易真空凍結乾燥装置を用いる乾燥法,(3)オーブンを用いた乾燥法を対象とした.その結果,(1)と(2)の凍結乾燥法を用いた場合,凍結時の氷の結晶の発達にともなう構造が認められ,初生的構造の観察は困難と考えられる.アルコール置換法を用いた場合,従来のモデルと類似する粘土粒子の面一端および端一端接触が顕著に認められた.オーブン乾燥法を用いた場合,アルコール置換法に比べて粘土粒子の面一面接触が多く認められた.したがって,アルコール置換法が試料の状態によらず最も有効と考えられる,また,オーブン乾燥法は,粘土粒子の配列の定性的特徴を読み取ることは可能と考えられる.
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