研究概要 |
平成23年度は,室内実験による検討,佐賀六角川での野外調査,ならびに成果発表を行った. (1)室内実験による検討では,ベントナイトを用いた沈降実験を行った.含水試料の乾燥処理は,t-ブチルアルコール置換法を用いた.その結果,fluid mud堆積物には,粘土粒子の主に面一面接触による凝集体「粒状構造」の発達が認められた.そのサイズは,沈降前のサスペンジョン濃度によらず4.6-6.5μmであった.一方,単位面積あたりの個数は,サスペンジョン濃度が高いほど多い.さらに,明瞭な垂直方向のサイズ変化はなく,一様なことが特徴である.このような特徴と,より低濃度のサスペンジョンによる泥質堆積物の粘土ファブリックの特徴との比較から,fluid mudに相当する高濃度の泥質流体で形成されるフロックは,粘土粒子どうしがより密接に結びつき,沈降後もこわれにくいために堆積物中で「粒状構造」として観察されると考えられる. (2)室内実験による検討をふまえ,潮汐作用の卓越する佐賀六角川のfluid mud堆積物の検討を行った.押し込み式採泥器を用いて,チャネル底堆積物のコア試料を採取した結果,岩相の特徴からfluid mud堆積物と認定される泥質堆積物の挟在が認められた.このfluid mud堆積物について,t-ブチルアルコール置換法で乾燥処理を行い,粘土ファブリックを観察した.その結果,粒状構造の発達が特徴的に認められた.したがって,fluid mud堆積物の認定のためのツールの1つとして,粒状構造で特徴づけられる粘土ファブリックが有効と考えられる. (3)22年度,23年度の成果のそれぞれ一部について,堆積学研究(2編),日本地質学会第118年会(水戸),2011 Geological Society of America Annual Meeting(Minneapolis)で発表を行った.
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