ホウ素中心に従来のような嵩高い保護基や窒素原子などの導入を必要としない、安定な含ホウ素π共役平面という新たな骨格を有機合成により構築し、その物性を詳細に検討した。これまで、π電子系の周辺部にホウ素を導入した分子は数多く報告されているが、中央にホウ素を埋め込んだπ電子骨格は、誰もが憧れていた構造でありながら、その合成の困難さ故に報告はこれまで皆無であった。また一方で、物理化学的な手法によって得られる「ホウ素ドープグラフェン」は同様の含ホウ素π共役構造であり、魅力的な材料特性を示すものの、分子量も形状も揃っていないことから、科学的な電子状態の解明には至っていない。いわば本研究は、「ホウ素ドープグラフェン」をボトムアップ合成し、形状のそろった単一化合物として扱うことを可能にした最初の研究である。
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