研究課題
本年度は、基板の仕事関数を変えることでドナー/アクセプター界面の電子構造を制御し、有機太陽電池内の電子状態を捉えると共に、特性と界面電子構造の相関を見出すことを試みた。昨年度立ち上げた超高真空対応のケルビンプローブを駆使し、低分子系有機太陽電池の界面電子状態を調べたところ、bathocuproine(ホールブロッキング層)/フラーレン界面で巨大な内蔵電位の変化が観測された。これは、電子取り出しの効率に大きく影響していると考えられる。また、Alを透明電極基板に薄く蒸着することで仕事関数を制御し、ドナー/アクセプター界面で電荷分離に不利な内蔵電位が生じることを見出した。この界面を用いた素子特性を調べると、生じた内蔵電位により光起電力が打ち消されるということ示唆し、ドナー/アクセプター界面の電子構造が太陽電池特性に与える影響が明確になった。昨年6月に理化学研究所へ移動してからは、太陽電池作製・評価装置を立ち上げた後、理化学研究所内の有機合成グループおよび東大工学研究科の相田卓三教授のグループと協力し、新型のドナーや、フラーレンに変わる新しいアクセプター探索にも乗り出した。現在新型アクセプターの検討を進めているが、0.48%の変換効率が得られた。この結果は、更なる素子作製条件の最適化により、フラーレンと並ぶ材料が開発可能であることを意味し、意義深い。また、n型ドーピングとして用いるテトラチアナフタセン(TTN)を合成し、溶液プロセスを用いたドーピング技術の開発を始めた。当初ドーピングは蒸着で行う予定であったが、高分子系への展開も見込み、溶液プロセスでのドーピングに変更した。TTNとフラーレンを混合した溶液でドーピング効果の有無を電流-電圧測定で確認を進めているが、ドーピングの新たな方法を見出した重要性は大きい。
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Organic Electronics
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Physical Chemistry Chemical Physics
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