研究課題
光触媒内部で生成した励起キャリアは触媒表面の反応サイトに移動し、励起電子が水素を、励起ホールが酸素を生成する。このとき、光触媒表面に金属や金属酸化物などの助触媒粒子を修飾すると、水素や酸素の生成サイトとして機能するため、光触媒活性が向上することが知られている。そこで、本研究では、助触媒粒子上に励起キャリアが移動することで電子状態が変化することに注目し、in-situX線吸収分光法の測定により、光触媒上での励起キャリアの移動を観測することを目的とした。.昨年度開発したX線吸収分光測定システムを使用し、Photon FactoryのBL-12CとSPring-8のBL01B1で実験を行った。サンプルとして、Pt粒子を電着したPt/Nb:SrTiO_3基板と酸化マンガン粒子を電着したMnO_x/Nb:SrTiO_3基板を用いた。光触媒サンプル(作用電極)、Pt線(対極)、Ag/AgCl(参照電極)、0.1MのNa_2SO_4水溶液を用意し、紫外光照射下でのX線吸収分光測定を行った。まず、Pt/Nb:SrTiO_3基板の測定を行い、Pt L_<III>端のX線吸収スペクトルを得た。続いて、紫外光を照射することで光触媒反応下での測定を試しみたが、スペクトルに変化は見られなかった。励起電子がPt粒子上に移動すると、Pt上にプロトンが吸着してスペクトルが変化すると考えられるが、調製したサンプルのPt粒子の粒径が50nmと大きいため表面敏感な測定ができなかったものと考えられる。一方、同様の測定をMnO_x/Nb:SrTiO_3基板で行ったところ、6556eV付近に観測された3価のピークが2価に変化する様子が観測された。これは、光照射下で励起電子が移動したため、一部の酸化マンガン粒子が還元されたことを示している。酸化マンガンは酸素生成サイトとして機能するため、励起ホールが移動すると考えられていたが、逆の励起キャリアである電子が移動するケースがあることを初めて見出した。逆の励起キャリアの移動は光触媒活性を下げる要因になるため、今後は効率的なキャリア移動の条件を明らかにし、高活性な光触媒材料の開発に寄与していきたいと考えている。
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