研究概要 |
赤外分光を用いて細胞応答現象を観察・評価するため,既存設備である赤外分光装置の試料室内に培養細胞の観察系を構築した. 半導体プリズムを細胞の培養基板に用いた細胞培養セルを製作し,赤外光によりプリズム基板上の細胞の情報が検出されることを確認した,検出された1650cm^<-1>および1550cm^<-1>の赤外光の吸収スペクトルピークは,プリズムのみの場合や培養セル内に蒸留水を満たした場合には検出されず,液体培地由来のスペクトルピークに比して高いピーク強度で検出されたことから,プリズム表面に接着した細胞内のタンパク質に由来するアミド結合のスペクトルピークが検出されたものと考えられる. また,細胞培養セルに灌流路を接続し,力学実験系の設計・構築を試みた.培地を灌流しながらの赤外分光計測については,少ない流量(20μl/min)下において,赤外分光装置の試料室内での長期間培養(~7days)が可能であることを確認した.この観察系を用いて,脂肪前駆細胞3T3-L1の脂肪細胞への分化過程を経時的に計測し,分化にともなう細胞内の脂質形成過程をとらえた(投稿準備中).今後,骨系細胞の細胞応答を惹起する力学刺激量の付与と,その流量に耐えうる細胞培養セルの再設計が必要である. このほか,灌流路を用いない観察系を用いた,懸濁液中のミトコンドリアによるアデノシン三リン酸(ATP)の合成過程,および,加水分解過程を表面赤外分光法で経時的に測定した研究成果について,学術雑誌にて報告(Appl Phys.Lett.Vol.98,133703)するとともに,国際学会,国内学会で発表した.
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