研究概要 |
現在,カメラや分光器など多くの光学機器に屈折回折素子が多く用いられている.屈折・回折率の向上のため,樹脂と比較して透明度や屈折率の高いガラス材料において,表面にサブ波長のピッチ幅の溝アレイを高精度・高効率・低コストに創成する量産技術が求められている.そこで本研究では従来の球面・非球面レンズの量産技術として注目されてきたガラスモールドプレス(GMP)成形技術を微細形状加工に適用することを提案した.H22年度の研究を引き続き,H23年度では下記のような研究成果が得られた. まず,H22年度で提案した切削方法でアモルファスニッケルリン(Ni-P)に対してピッチ500nmの平行溝の製作に成功した.またNi-P金型の寿命を向上させるため,アモルファスNi-Pを熱処理により結晶化させ,Ni-Pの高温硬度を更に向上させた.Ni-Pの結晶化は硬度上昇とともに切削加工も困難としたが,粗加工時に切込み量を200nmとして2回を行い,仕上げ加工時に切込み量を100nmとして加工することで,ダイヤモンドバイトの摩耗を抑制し,結晶化Ni-Pに対してサブ波長の溝アレイの創成に成功した. 次に,GMP成形における微視的なシミュレーションと巨視的なシミュレーションの両方を行い,微視的な分析と巨視的な分析によりサブ波長屈折回折光学素子のナノ精度成形の最適条件を導出した.成形時のガラス材料の微視的な流動現象と高温高圧下でのガラス・金型間の界面現象を可視化した.また,成形温度・プレス力の最低条件を推定し,サブ波長屈折回折光学素子のナノ精度成形に必要なプレス成形条件を導出した. 最後に,結晶化Ni-P金型を用いてシミュレーションによって得られた最適成形条件によりガラスプレス実験を行い,サブ波長ガラス屈折回折光学素子を創成した.従来のアモルファスNi-Pがプレス力による変形を克服し,ガラス微細溝の成形精度の向上とともに,Ni-P金型の寿命の向上が確認できた.また解析のモデルの有効性を検証した.
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