研究概要 |
本研究は,建物部材に用いられる鋼材の繰返し載荷実験を実施してデーターを蓄積した上で動的履歴特性を検討し、更にその履歴特性を考慮した建物の応答解析により、歪速度が耐震性能に及ぼす影響を評価するものである。H23年度の研究成果は以下の2店である。 (1)ダンパー用鋼材について動的繰返し載荷実験を実施し,更なるデーターの蓄積を図る 前年度に実験計画と準備を行った動的繰返し載荷実験を実施した.試験体はSS400に加え低降伏点鋼であるLY225,及び比較検討のためSN490やSN400などの鋼種についても同型の試験体を製作して実施した.単調引張載荷においては歪速度が増加するにつれて,いずれの履歴でも弾性域から一度応力度が卓越した後,降伏棚を殆ど示さずに歪硬化域に移行していた.特に最も歪速度の大きい50%/sの場合,降伏してから歪硬化域に至るまで履歴が波打って不安定になった.繰返し載荷における降伏点を最初の引張側半サイクルにおける0.2%offset耐力で定義すると,いずれの鋼種においても歪速度が増加すると降伏応力度は増加し,準静的載荷である0.1%/sでの値に比べると1%/sでの値は殆ど変わらなかったが,10%/sでは1.0~1.2倍程度,50%/sでは鋼種によるが1.1~1.5倍程度増加した.なお歪速度による降伏応力度の増加傾向について,振幅による差はほとんど生じなかった.また各試験体の全履歴においての最大の応力度は歪速度が増加すると最大応力度も増加傾向であるが,増加率は1.1~1.2倍程度であった. (2)動的繰返し載荷実験肉基づく履歴特性のモデル化 繰返し載荷の実験結果を累積歪における応力度の変化で検討すると,最初の半サイクルの際に0.2%offset耐力は歪速度によって上昇するが,その後は低下して頭打ちとなる.一方半サイクルでのピーク耐力はそれほど変わらない.このことから降伏時の履歴のみ別途考慮が必要であるが,それ以降は破断に至るまでほぼBi-linearモデルとして作成できた.
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