研究課題
同位体比から得られる長期的気候変動の情報を整理・検討するため、UCSD/SIOの同位体GCMとNOAA/ERSLの20世紀再解析データを組み合わせて「20世紀同位体再解析データセット」の初期バージョンを作成した。得られた100年分超の再解析データを用いて、日単位から十年単位までの様々なスケールでの同位体比変動を分析し、様々な観測データと比較した。特に、熱帯域のサンゴ骨格の酸素同位体比(δ^<18>O_<coral>)を30地点ほどで入手し、水温寄与を取り除き、水循環のみの指標である海水酸素同位体比(δ^<18>O_<sw>)に変換し、20世紀同位体再解析データと比較することにより、降水や水循環の指標としてのサンゴ記録の妥当性について定量解析を行った。その結果、年間降水量の変動が500mm/year以上の地域では、サンゴ記録によって現地の降水量の年々変動の50~60%が説明できることを確認した。一方で、蒸発や降水同位体比など他の要素も無視できない寄与率を持つほか、海流や河川流入による影響およびその地域特性も重要であることが確認された。また、今回作成された初期バージョンにはNOAA/ERSL20世紀再解析データのアンサンブル平均場が外力として用いられているため、19世紀後半から20世紀初めにかけて高周期変動成分が取り除かれてしまっており、その影響で特に太平洋域と南半球においてドリフトが発生していることが確認された。来年度には、単独のアンサンブルメンバーに適切な補正をかけることにより、アンサンブル平均場となじみつつ高周期変動成分も保持できるようなナッジング技術を開発中である。
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Journal of the Meteorological Society of Japan
巻: 印刷中掲載確定
Journal of Geophysical Research
巻: 115 ページ: doi:10.1029/2009JD013511
巻: 115 ページ: Doi.10.1029/2010JD014032
Atmospheric Chemistry and Physics
巻: 10 ページ: 3427-3442
http://hydro.iis.u-tokyo.ac.jp/~kei/?CV