研究概要 |
平成22年度に実施した研究は,プロジェクトの目的を果たすための基盤構築に重点を置いている.これは大きく"1.研究データの蓄積","2.実験設備の構築","3.人的ネットワーク構築"等の主題で分けることができ,以下に各項目の具体的な内容と当該年度の成果を記す. 1.研究主題は人工衛星レーダデータを利用する技術開発であるので,先ず,研究対象の人工衛星資料を蓄積する必要がある.当該年度ではヴィアンナ工科大学との協力を通じて全地球規模のENVISAT ASARデータを取得し,日本,インドおよびシベリア等主要ターゲット地域に対してはALOS PALSAR高解像度偏波レーダのデータを取得した. 2.人工衛星レーダを利用する地球環境の観測データは,地表面の多様な電波散乱現象による結果である.複雑な自然環境に対する観測データから定量的な環境変数を机上だけで導出することは,実際上難しい問題である.そこで,電波散乱モデルの開発,あるいはデータ処理アルゴリズムの開発において,統制された環境での電波散乱実験が非常に重要となる.当該年度に新潟大学では,このような実験のための大規模電波暗室を完成させ,高精密な偏波レーダ観測実験を実施した.実験は次年度研究にも継続して行う予定であり,新しいレーダリモートセンシング技術を開発するには,必須の実行項目と考えている. 3.リモートセンシング技術は,広い地域に対して遠隔で特定情報を取得するということを意味する.特に,環境変化が加速度的に変化している乾燥地や寒冷地域は,非常に広域で調査が容易でない領域に存在しており,このような地球規模的な地域を研究するには,国際的な協力研究が必須である.このため,国際ワークショップの開催,国際研究プロジェクトの提案など人的ネットワークを構築して,国際協力プロジェクトを樹立するための活動を当該年度に実施した.
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